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>お部屋編>家財保険で事故に備える>とある水漏れ事例 故意でなくとも |
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日も暮れかけた夕刻に店の電話が鳴り、早乙女がそれを取りました。 「ああ、○○ハイツの宮部ですけど、今帰ってきたらね、水が天井からすごいんです…! もうソファーから布団から水浸しですよ、水道管でも破裂してんじゃないですか、どうしたらいいですか?」 電話の主の宮部さんは独身の40代男性です。早乙女が直接入居のお手伝いをしたわけではありませんでしたが、契約までに何度か店で挨拶をしたことがあるので憶えていました。 宮部さんはかなり焦っていて、電話の口調も半ばパニック状態でいました。早乙女はすぐに行きます、といっていったん電話を置き、車をアパートに向けて走らせました。 ほどなく現場に着いて一階の宮部さんの部屋を訪ねると、電気も点けられず暗く灯りのない中で天井から二本の水の線がじょろじょろと流れ、真下に置かれたバケツを打ち付けていました。水の重みで天井の壁紙がたわみ、その隙間から水が溢れているようでした。 やあ、ひどいですねえ、上の階のひとにはもう当たってみましたか? と早乙女は尋ねました。原因は水道管の破裂などという大袈裟なものではなくて、上の階からの水漏れだと確信したからです。 「いや、上には行ってないよ」とまさかというような顔で宮部さんが言うので、一緒に行きましょうと促しました。 宮部さんの部屋は101号室でしたので、その真上の201号室から漏れているのは間違いありません。インターフォンを何度も押してドア越しに呼びかけたのですが反応がありません。外から窓を確認すると真っ暗で、どうやら留守にしている様子でした。 仕方がないので早乙女は各部屋のドア横にある水道メーターをケータイの明かりで照らして宮部さんと共に覗き込みました。…やはり銀盤がぐるぐると勢いよく回っています。誰もいない201号室の水道が開いている何よりの証拠でした。 早乙女たちはその水道の止水栓を閉めて一階に戻り、たっぷり水を含んだ天井をしばらく見ていました。すると案の定しだいに水の落ちる勢いが収まってきて、宮部さんも「ああ良かった」と安堵したのか冷蔵庫からアセロラジュースを二本取り出すと早乙女に飲むように勧めました。 宮部さんが後始末を始める中、早乙女は店に連絡を取り、201号室のTさんに電話をかけてもらうよう頼みました。折り返し店からかかってきた電話によると、Tさんがアパートに帰ってくるのにあと40分はかかるらしいとのことでした…。 被害者である宮部さんにそう伝えてしまえば後は当人同士の問題なので一度店に戻ろうかとも思ったのですが、水浸しで今夜の寝床もままならなそうな室内をちりとりで必死に水かきしている男性がすぐ後ろにいるわけで、なんとなく気が引けるというか、つい車からタオルを取り出してその横でごしごしと拭き掃除を手伝ってしまうのでした。 やがて事情を聞いて息を切らしながら帰宅したTさんは開口いちばん「うっあ〜」と宮部さんの部屋の中で立ち尽くしました。 Tさんは一人暮らしのOLです。背中の開いた服装でバッグを肩に掛けていました。呆れたように部屋を一通り見渡すと、おもむろに二階に向かって駆けていきました。 早乙女は「謝りもしないのか」と怒りだす宮部さんをひとまず置いてTさんの後を追って上へあがり、水道の止水栓を開きました。するとすぐに「きゃー」というTさんの声が。 全自動洗濯機の給水ホースがなんらかの拍子で外れていたことが原因で起きた事故でした。 当然Tさんの部屋の床も水浸しで、最初は恐怖とショックのあまり自分がいない間に誰かが侵入していたずらしたのだと主張していたのですが、気分が落ち着くにつれ、どうやら自分の不注意らしいと認めました。 ですが、宮部さんに対する謝罪はとうとうないままでした。このことがひどく宮部さんを傷つけてしまい、後にTさんの親御さんとの話合いがこじれる遠因となり未だ解決に至っていないのです。 Tさんは今までに何度か引越しを経験している一人暮らしのベテランで、今回契約時に付随する家財保険の加入を初めて断り、つい半年前に入居したばかりでした。 前へ← メニュー 次へ |