実践!一人暮らし-あたる生活 >入居後編>ストーブ消してきたっけ?>また髪が

ストレートに憧れた



鏡を見るたび思う。
ああ、どうして俺は癖毛なのだと。

出かけの際のたしなみといえば髪の毛のセットなどもあると思いますが、早乙女の髪はいままで何人もの美容師さんに「これはかなり手ごわいわ。 く、癖が強いですね…」と言わしめたほどの強烈な巻き癖がありまして、散髪から一週間経った朝には襟足とモミアゲが天井に向かって一斉にカール。鏡の前で寝ぼけ眼を水で洗ってみればまるでサリーちゃんのパパのよう。口髭を生やしたら髭までカールするんじゃねえかと思うほど、生まれつき我が髪たちは重力に対しヘソを曲げているのであります。

早乙女も美容師さんが教えてくれたみたいにハードワックスとスプレーを使ってかっこよく髪型をキメたいのでありますが、いかんせん素人仕事、仕上がりはいつも「癖毛を生かしたナチュラルな無造作ヘア」というよりは「癖毛に巻かれたハレンチな鳥の巣頭」くらいの出来といったところ。少し悩んで耐えられなくなると結局はお湯で洗い流してドライヤーを当て、こざっぱりしたサリーちゃんのパパに戻してから「しかたねえや」とお出かけする日々です。


十代の頃は髪型なんかに気を使うのは軟派な証拠だといわんばかりに手入れの要らない短髪硬派思考だったものですが、妹に「ジャニーズに坊主はいないでしょ」と教わってからは、かれこれ十年以上、髪の毛は普通に寝癖がつく程度の長さをキープしております。
決して自分はジャニーズではないのですけれど、女性はどうやら長めが好きみたいですし、早乙女だって女性にもてたいのでありますから、たとえ毎朝サリーちゃんのパパみたいな頭になってもばっさり切るという踏ん切りがつきません。


この癖毛、家の外に出てからも無邪気にうねり、風に吹かれたり雨に打たれたりすると持ち主すら予測できないほど気持ち良くうねり始めます。

バイトの面接で向かい合った担当から頭くらい梳かしてきなさいよといわれたこともありました。櫛は30分前に入れたばかりなのに。
それからパートのおばさんにパーマ代大変でしょうと真剣に訊かれたこともあった。その目は「私だってパーマくらいかけてお洒落したいわよ、いいわねお気楽な独り者は」といわんばかりの迫力でして、いやいやこれは天然パーマなのだし、そんなお金があったらストレートパーマをかけたいくらいですから。まったくもう。

改めて考えてみても理不尽な非難を浴びることはあれど、得したことは一度もないと思う。
たまに「癖毛かー。いいねえ」などというひともおりますが、どこがいいのだ? と尋ねると「いや、なんとなく」といったきり言葉を濁す。まあ、掘り下げて訊くのも野暮の極みではありますが、本当にいいところなんてあるのだろうか?

でもね、よく見てください。
髪という字は「長い友」と書くじゃありませんか。友だちにああだこうだと文句を垂れるより自分を磨く。大昔のひとはきっとそう言いたいに違いない。



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