![]() |
>お部屋編>求む!連帯保証人>涙の手のひら返し2話 泣きの土下座 |
|---|
外はすっかり日も暮れ、そろそろ営業も終了の時間という頃にご夫婦はやってきました。 子供たちの姿はなく、かわりに薄手のジャンパーを着た20代中ごろと思われる青年がその後ろで突っ立っています。口を固く結びつつ板前が魚の目利きをするような小難しい顔でまず店内をぐるりと見渡しました。 「連帯保証人というのはどんな責任があるのか教えてください」 やけに縮こまったご主人となにかに祈るように俯いた奥さんの横で、見かけた歳のわりに浮わつきがない声の青年が、まっすぐに早乙女のことを見ました。 話によるとかれは奥さんの姉の息子さんで、ご夫婦とは叔父、叔母、そして甥という間柄でした。いとこでも連帯保証人の素質に問題はありませんし、仕事も缶詰を加工する工場にもうずっと勤務しているということでしたので、早乙女はその責任の範囲を自分なりにわかりやすく正直に説明しました。 説明している間一言も口を挟まなかった青年は、話を聞き終えるとやがて「それってつまり自分が借りているのと同じようなものですよね?」と怒りの片鱗を口調に滲ませました。 「叔父さん、話が違うじゃないですか」と青年がご夫婦を責めました。「形だけハンコつくようなものだからなんて散々いってたくせに」 ご主人はますます縮こまって「うーえーあーもー…」と言葉にならない言い訳に四苦八苦し、奥さんはひたすら押し黙って下を向いてしまいました。 青年はさらに続けてなにかを言おうとしたようですが、急に表情から力が抜けたと思うと妙に醒めた感じで溜息をひとつつきました。 「もうだめだよ。やっぱり連帯保証人なんて無理だからね、ほかを当たってくれよ」 このご夫婦にほかのあてがあるのなら、初めからわざわざ奥さんの姉さんの息子さんなんていう回りくどい間柄の人物に頼んでいないでしょう。 肉親兄弟姉妹などといった近しいひとたちにはすでに散々お金の工面などで頼り切った後だと考えるのが現実的です。 信じられないかもしれませんけれど、お金のことになると血のつながりなんて忘れるくらい冷酷にもなれるのが人間なのです。早乙女が今まで見てきた経験からすれば、たぶんこのご夫婦に頼れるあてなどもうありません。 額に脂汗を掻いて青年と目を合わすことすら出来なかったご主人は、意を決したように椅子から降りたかと思うと深々と青年の足もとに頭を垂れました。この光景に早乙女を含め、それとなく様子を見守っていた店のスタッフまで思わず息を呑みました。すでに営業時間が過ぎていたためにほかにお客さんがいなかったことは救いでした。 そんな一瞬の凍りついた空気を破って、奥さんまでご主人の傍らで、ためらいなくそれに倣ったのでした。 1話へ メニュー →続き |