| >プロフィール>昔その7 おわかれ |
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ある日早乙女はおばさんに呼ばれました。 「ここに長くいてもあなたのためにならない。お給料もあげられなくてごめんね。私、あなたのために居酒屋で働けるようにお願いしてきたから」 早乙女は以前おばさんに、また包丁を使う仕事をする気はあるかときかれたことがありました。その時はなんの気なしに「そうすね」なんて答えたのですが、こういう理由でおばさんはきいていたのだと知り、自分の呑気さを恥じると同時におばさんの思いやりに胸を打たれました。 おばさんの娘さんは美容師をしており、その同僚のお父さんが営んでいる居酒屋とのことでした。早乙女とは面識のない娘さんが、わざわざ同僚にあたってみてくれたという話をきかされ、本当に頭の下がる思いがしました。 おばさんは「でもあなたの気が進まないようだったらまだしばらくここにいればよい」ともいってくれました。「よく動いてくれるし助かってるのよ」というふうに。 正直なところいまさらこの鈍った体で、しかも一度は失望した世界に出戻るというのはかなり不安でした。けれどおばさんのいうように、このままの生活を続けていてもどこにも辿り着かないんじゃないかという気持ちも芽生えていたのです。 潮時かな・・・。早乙女はこのチャンスに乗ってみることに決めました。 翌日の別れ際、おばさんは電車賃に1000円をくれました。「また何かあった時はいつでも戻ってきなさい」といいながら。早乙女は初めておばさんの前で泣きました。ただただ感謝の気持ちでいっぱいでした。ああ、おれはこのひとのために何ができたんだろう・・・今度来るときはたくさん御礼をしたい・・・。そんなふうに思いながら早乙女は頭を下げるだけでした。 駅までの道すがら、ついこの間まで暮らしていたマンション寮の前を歩きました。 そして夕刻の混雑した電車に乗り、3つ目の駅で降りました。 → 続き |
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