| >プロフィール>昔その9 ひとり歩き |
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中国人留学生の李さんは、学校に通いながら折り込みチラシを新聞の間に挟むバイトもしていました。 日本に来てからまだ1年くらいらしいのですが、日本語はほぼ不自由なく使えました。まれに初めて聞く言葉があると、そらで何度も復唱して憶えてしまうくらい熱心に日本語を学んでいました。 マスターにしょっちゅう時給をあげてくれと頼んでいたみたいなのですが、これはもう李さんのマスターに対する挨拶みたいなもので、本気にとられることはなかったようです。そのことで時折、政治的なブラックジョークをぼそっとこぼすのですが、早乙女は聞こえないふりをして接していたので、喧嘩もなくいい関係のまま仕事を続けられました。 李さんは頭の回転が速く話も面白いので、いつも李さんがやってくる時間が待ち遠しいほどでした。バイトが休みの日が物足りなく感じるくらい、李さんと一緒に働くのは楽しいものだったのです。不慣れな早乙女に焼き物の仕込みを教えてくれたのも彼でした。 奥さんは年のわりに色気があり、若いころはさぞ美人だったと思われました。ただ気が強く、営業中でもよくマスターと口喧嘩をしていました^^; ただ早乙女は便宜上「奥さん」とよんでいたのですが、どうも真っ直ぐじゃない事情があるようで、美容師をしている娘さんとは抜き差しならない仲のようでした。 そのことについてなんとなく触れちゃいけない感じでしたし、ひと様の家庭の事情に首を突っ込むのも品がないと思いましたから早乙女も真相はしりません。 休日など時々、奥さんによばれて買い物のお供もしました。奥さんはとてもよく喋るのですが、その大抵がうそとも本気ともとれないようなマスターの悪口だったので、早乙女は口をはさむことは敢えてしませんでした。 でも奥さんと外を歩くのは楽しかったし、その度お茶を御馳走してくれたので、一人退屈な休日を過すよりはずっと気分転換にもなりました。 奥さんもマスターも、早乙女のことはほとんど何もたずねませんでしたから、それがまた居心地よく感じたのかもしれません。 仕事が終わるとマスターに連れられ、よく向かいのスナックに行きました。スナックのお客さんがうちの店から出前をとってくれるので、そのお返しに行くようなものです。ビールと酎ハイを2、3杯飲んでカラオケなんか歌ったりして遊んだあと、調子が良いとハシゴになるのですが、早乙女はそこそこに切り上げてマスターは夜にどっぷりという、多くがそんなパターンでした。 早乙女はあまり騒がしいところは苦手なのです(;´`) そんなこんなで、ちょっと前の自分の暮らしぶりを振り返ると信じられないくらい恵まれた道を歩いていたのですが、早乙女の行方がわからずにおろおろしているであろう母親のことが気がかりでした。 → 続き |
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