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>入居後編>街に馴染む>故郷は好きですか? 町を想うとき |
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「たとえば」と女が言った。「人ひとり暮らすのに大きな街はいらないって思うの」 カウンターに頬杖をつきながらグラスの融けた氷をストローで玩んでいる。「そうじゃない?」 男は中立的に頷いたあと、静かにわからないとだけ言う。 「都会に憧れたこともあったわ。だけどね、よく考えたら私のお気に入りの場所はいつもひとつだけ。 パンが欲しければ近くのスーパーに行けばいいし、レコードや服を買うお店もいつも一諸だもの。ここに来ればジントニが飲めるしあなたにだって逢えるんだから」女はストローをとめて、少しだけ笑む。「素敵なことだわ」 男は丁寧にカットしたライムを搾り、コースターの上のグラスを取り替える。氷がからんと涼しげに回る。その一連の動きは洗練されていて無駄がない。 「あなただって都会に出たからっておいしいお酒が創れるわけじゃないでしょ」 まあね。女の棘をやり過し、男は微かに口元の緊張を解く。この町とこの仕事に不満はないと言う風に。 私は ― 背の高いグラスの内側では無数の気泡がせわしく弾けている。女はそれを物憂げに見つめながら呟く。 「誰よりも、この町を愛してる」 女にとって幻想とは、ジャムで皿を洗うようなものだった。 ☆上記の物語はしまねこさんのblog、夏色ストリート「その1」から転載させていただきました。 (しまねこさんの意思によりリンクは控えております。ご本人はとてもシャイなかただということを誤解のないように付け加えておきます^^;) 早乙女はこのお話がとても好きです。人を愛し、都会に媚びない女主人公の潔さが粋で、たまらなくかっこいいと思います。 前のページの繰り返しになりますが、新生活を始めたけれど現在退屈しながら暮しているひとはもうお気づきですよね? どれだけ街が大きくとも、それがあなたを救ってくれるわけではないのです。 新しい街での出会いを、どうか大切に。 前へ← メニュー 次へ |